2024年8月11日日曜日

Catch Key Points of a Paper ~0094~

論文のタイトル: Diborane Reductions of CO2 and CS2 Mediated by Dicopper μ-Boryl Complexes of a Robust Bis(phosphino)-1,8-naphthyridine Ligand

著者: Matthew S. See, Pablo Ríos, and T. Don Tilley

出版: Organometallics

巻: 43, 10, 1180–1189

出版年: 2024年 


背景

1: 研究背景

二核金属反応中心は協同効果により独特の化学的性質を持つ

多電子酸化還元過程や特異的な基質活性化が可能

酵素や不均一系触媒の活性部位で重要な役割を果たす

CO2還元などの重要反応を媒介する


2: 課題と目的

二核金属中心の合成制御は依然として困難

核数、金属間距離、配位幾何の精密制御が課題

1,8-ナフチリジン系配位子を用いた二核銅錯体の研究が進展

より低配位数の金属中心を持つ錯体の合成が求められる


3: 研究の具体的目標

化学的に安定なPNNPFlu配位子の設計・合成

新規二核銅μ-ボリル錯体の合成と特性評価

CO2およびCS2還元反応における触媒活性の検討

反応中間体の単離と構造解析による機構解明


方法

1: 配位子合成

フルオレン-9,9-ジイル基を含む新規PNNPFlu配位子を設計

2,7-ジクロロ-1,8-ナフチリジンと(9-(ジイソプロピルホスファニル)-フルオレン-9-イル)リチウムの反応で合成

NMRスペクトル解析により構造を確認


2: 錯体合成

PNNPFluと[Cu(NCMe)4][NTf2]の反応で二核銅錯体1を合成

錯体1からフェニル基、tert-ブトキシド基、ボリル基を持つ錯体2-5を合成

単結晶X線構造解析により構造を決定


3: 反応性評価

錯体4, 5のC(sp)-H結合活性化能を評価

CO2, CS2との反応性を検討

生成物の単離と構造解析

DFT計算により電子状態を解析


結果

1: 新規配位子の特性

PNNPFlu配位子は高い化学的安定性を示す

塩基性条件下でも分解しない

二核銅中心を効果的に安定化


2: 二核銅ボリル錯体の反応性

錯体4, 5はC(sp)-H結合活性化に高い活性を示す

フェニルアセチレンとの反応が既報の錯体より速い

CNXylとの反応で7を生成、低配位数銅中心の反応性を実証


3: CO2, CS2還元反応

錯体4はCO2を触媒的にCOに還元

CS2との反応で中間体様錯体10, 11を単離

Cu-S-C-B結合を含む新規構造を確認


考察

1: 配位子設計の意義

フルオレン-9,9-ジイル基導入により高い安定性を実現

側鎖の脱プロトン化や置換反応を抑制

二核金属中心の本質的な反応性の研究が可能に


2: 反応性向上のメカニズム

DFT計算により電子状態を解析

Cu-B結合の性質は既報錯体と大差なし

低配位数銅中心が高い反応性の主因と推定


3: CO2還元反応の意義

二核銅ボリル錯体による初のCO2触媒的還元を実現

単核銅錯体より反応は遅いが、触媒の安定性が向上


4: 反応中間体の単離

CS2との反応で10, 11を単離

CO2還元反応の推定中間体構造を実験的に支持

ボリル基移動を含む反応機構の妥当性を示唆


結論

安定なPNNPFlu配位子を用いて新規二核銅ボリル錯体を合成

高い反応性と安定性を両立する触媒設計を実現

CO2, CS2還元反応の機構解明に貢献

二核金属錯体の反応性制御に新たな指針を提供


将来の展望

今後、他の二核金属系への応用が期待される

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