2024年8月14日水曜日

Catch Key Points of a Paper ~0097~

論文のタイトル: Development of a Divergent Route to Erythrina Alkaloids

著者: Sebastian Clementson , Mikkel Jessing , Paulo J. Vital , Jesper L. Kristensen*

出版: Synlett 

巻: 31, 327–333

出版年: 2020年 


背景

1: エリスリナアルカロイドの概要

19世紀末に同定され、現在100種以上が単離されている

独特の四環性β-3級スピロアミン骨格を特徴とする

(+)-ジヒドロ-β-エリスロイジン(DHβE)は代表的な化合物の1つ


2: 既存の合成アプローチ

多くの合成努力がD環芳香族の四環性骨格に向けられてきた

アキラルなイミニウム中間体を利用するアプローチが一般的

エナンチオ選択的合成はわずかしか報告されていない


3: 研究の目的

DHβEの短く柔軟なエナンチオ選択的合成経路の開発

後期段階でのD環導入を可能にする発散的アプローチの確立

構造関連アナログへのアクセスを提供するプラットフォームの構築


方法

1: 合成戦略の概要

初期段階での第3級スピロアミン立体中心の構築

後期段階でのラクトンD環の導入

発散的逆合成アプローチの採用


2: 第一世代アプローチ

L-プロリンを用いたアルドール反応による出発物質の合成

閉環メタセシス(RCM)による5,7-二環系の構築を試みる

複雑な副生成物混合物の形成により断念


3: 第二世代アプローチ 

銅触媒クロスカップリングによるイナミドの合成

Trost条件下での環化異性化によるC5-C6結合の形成

HAT-Giese反応の試みは失敗


4: 第三世代アプローチ

Trostリガンドを用いた不斉アリル化による光学活性プロリノンの合成

RCMによるA-B二環系の構築

脱炭酸的α-シアノ化を鍵反応とした標的化合物の合成


結果

1: 鍵中間体の合成

不斉アリル化により95% eeで(+)-アリルプロリノンを得た

酸化的開裂、保護、Wittig反応を経てジエン前駆体を合成

RCMにより二環性中間体59を構築


2: 三環系の構築

脱保護、還元的アミノ化によりビスエステル69を合成

Dieckmann縮合により三環性β-ケトエステル70を得た

エノールトリフラート化、還元、保護によりカップリング前駆体73を合成


3: 最終段階の変換

Liu groupの脱炭酸的α-シアノ化を修飾して適用

生成したニトリルを加水分解して標的天然物1へ変換

プロリノン50から13工程で(+)-DHβE (1)の全合成を達成


考察

1: 合成戦略の利点

初期段階での四級立体中心の構築を実現

後期段階でのD環導入により柔軟性を確保

発散的アプローチにより関連アナログ合成への応用が可能


2: 既存合成法との比較

Hatakeyamaらの26工程、Funkらの20工程に比べて短工程数

エナンチオ選択的合成を実現し、光学純度の高い天然物を得た

中間体から様々なエリスリナアルカロイドへの展開が期待できる


3: 鍵反応の意義

不斉アリル化による光学活性四級中心の効率的構築

RCMによる二環系の簡便な合成

脱炭酸的α-シアノ化の応用による最終段階での炭素-炭素結合形成


4: 合成経路の限界点

ラジカル環化反応が失敗し、代替アプローチが必要だった

一部の変換で低〜中程度の収率にとどまった

さらなる最適化により全体の収率向上の余地がある


結論

(+)-DHβE (1)の新規発散的全合成経路を開発した

四級立体中心を触媒的不斉アリル化で構築し、RCMで二環系を形成

脱炭酸的α-シアノ化を鍵反応として天然物へ導いた


将来の展望

本合成経路は関連エリスリナアルカロイドの構造活性相関研究への応用が期待できる

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