2024年8月30日金曜日

Catch Key Points of a Paper ~0112~

論文のタイトル: Formal High-Order Cycloadditions of Donor-Acceptor Cyclopropanes with Cycloheptatrienes(ドナー-アクセプター型シクロプロパンとシクロヘプタトリエンの高次形式的環化付加反応)

著者: Denis D. Borisov, Dmitry N. Platonov, Nikita A. Sokolov, Roman A. Novikov, Yury V. Tomilov

出版: Angewandte Chemie International Edition

巻: e202410081

出版年: 2024


背景

1: 研究の背景

ドナー-アクセプター(D-A)シクロプロパンは有機合成化学で重要な役割

2-アリールシクロプロパン-1,1-ジカルボキシレート(ACDC)は代表的なD-Aシクロプロパン

ACDCは天然物全合成や生理活性化合物の合成に利用される


2: 未解決の課題

D-Aシクロプロパンの高次形式的環化付加反応の開発が課題

[3+2]や[3+3]環化付加は知られているが、より高次の反応例は少ない

特に[6+3]環化付加反応は全く知られていない


3: 研究の目的

D-Aシクロプロパンとシクロヘプタトリエン系との新しい高次[6+n]環化付加反応の開発

様々なメチル化シクロヘプタトリエンの反応性を調査

GaCl3活性化条件下での1,2-双性イオン中間体や1,3-双性イオン中間体の生成と反応性の解明


方法

1: 反応条件の最適化

様々なルイス酸触媒のスクリーニング

GaCl3が最も効果的な触媒であることを発見

反応温度、時間、試薬量などの最適化


2: 基質の合成と調製

各種D-Aシクロプロパン(ACDC)の合成

メチル化シクロヘプタトリエンの合成(ジアゾメタンとメチル化ベンゼンの反応)

生成物の単離と精製


3: 分析手法

NMR分光法による構造解析

X線結晶構造解析による立体構造の決定

質量分析による分子量の確認


結果

1: [6+2]環化付加反応

ACDCと1,3,5-トリメチルシクロヘプタトリエンの反応で[6+2]環化付加体を高収率で取得

ビシクロ[4.2.1]ノナ-2,4-ジエン誘導体が主生成物

高い立体選択性と位置選択性を実現


2: [6+4]および[6+1]環化付加反応

p-トリルACDCとの反応で[6+4]環化付加体も生成

ペンタメチルシクロヘプタトリエンとの反応で[6+1]環化付加体を確認

複雑な転位反応を経て生成物が形成


3: [6+3]環化付加反応

GaCl3触媒量の調整により[6+3]環化付加反応も実現

1,3-双性イオン中間体を経由する反応経路

芳香環上への環化付加も観察


考察

1: 反応機構の考察

GaCl3による1,2-双性イオン中間体の生成が鍵

シクロヘプタトリエンの構造が反応経路に大きく影響

複雑な転位反応や環開裂を経る場合も


2: 反応の位置選択性

シクロヘプタトリエン上のメチル基の位置が重要

立体障害の少ない位置で優先的に反応が進行

芳香環上への環化付加は電子供与性置換基で促進


3: 立体選択性の制御

生成物の立体化学は高度に制御可能

エステル基の嵩高さが立体選択性に影響

アダマンチル基などの導入で選択性が向上


4: 研究の限界点

一部の反応で収率が中程度

複雑な生成物混合物が得られる場合あり

反応の適用範囲のさらなる拡大が必要


結論

D-Aシクロプロパンの新しい高次環化付加反応を開発

[6+2]、[6+3]、[6+4]、[6+1]環化付加反応を実現

7員環カルボサイクル合成の新手法を確立


将来の展望

反応の一般化と天然物合成への応用

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