2024年9月11日水曜日

Catch Key Points of a Paper ~0124~

論文のタイトル: Rh → Sb Interactions Supported by Tris(8-quinolyl)antimony Ligands(Rh → Sb 相互作用:トリス(8-キノリル)アンチモンリガンドによる支持)

著者: Casey R. Wade, Brendan L. Murphy, Shantabh Bedajna, François P. Gabbaï*

出版: Organometallics

出版年: 2024


背景

1: 研究背景

L型とZ型配位子を組み合わせた両親媒性システムが注目されている

グループ13元素をσ受容体として含む配位子の研究が活発

グループ15元素をZ型配位子とする非典型的なシステムも研究されている

リンとアンチモンを用いた遷移金属錯体の研究が進展


2: 既存研究と課題

アンチモン部位がZ型配位子として作用する錯体が報告されている

M → Sb相互作用の大きさは、アンチモンの酸化状態や電荷により調整可能

これらの効果は遷移金属中心の触媒特性向上に利用できる

L型支持配位子の性質が錯体の特性に与える影響は未解明


3: 研究目的

電子供与性窒素配位子を持つスチビンの酸化還元非無垢性を調査

トリス(8-キノリル)スチビンと(MeCN)3RhCl3の反応を検討

新規Rh-Sb錯体の合成と構造解析

Rh-Sb結合の性質を理論計算により解明


方法

1: 配位子合成

トリス(8-キノリル)スチビン(LQuin)の合成

  - 8-リチオキノリン3当量とSbCl3 1当量をTHF中で反応

  - -78°Cで反応を行い、黄色粉末として得られた

トリス(6-メチル-8-キノリル)スチビン(LQuin-Me)も同様に合成


2: 錯体合成

LQuinと(MeCN)3RhCl3をDMSO中で反応させ、錯体1を合成

LQuin-Meと(MeCN)3RhCl3を反応させ、錯体2を合成

単結晶X線構造解析により錯体の構造を決定


3: 理論計算

密度汎関数理論(DFT)計算により錯体1の構造を最適化

Natural Bond Orbital (NBO)解析によりRh-Sb結合の性質を調査

結合軌道の分極度を計算し、結合の性質を評価


結果

1: 配位子の構造

LQuinの1H NMRスペクトルで6本の置換キノリル基由来のシグナルを確認

単結晶X線構造解析によりLQuinの固体構造を決定

中心SbとキノリルのN原子間に短い接触(平均3.08 Å)を観測


2: 錯体1の構造

SbがRh-Cl結合に形式的に挿入した構造

Sb-Cl3結合長: 2.5414(18) Å(Ph3SbCl2の平均2.46 Åに近い)

Sb-Rh結合長: 2.4662(13) Å

Rh-Cl1結合長: 2.7071(19) Å(Rh-Cl2: 2.3585(17) Åより長い)


3: 理論計算結果

NBO解析でRhとSbを結ぶ結合性軌道を同定

結合軌道の組成: 66.1% Rh / 33.9% Sb

Rh-Sb結合がRh原子側に分極していることを示唆

Rh-Cl1結合もCl原子側に大きく分極


考察

1: Rh-Sb結合の性質

Rh-Sb結合はRh原子側に分極

2つの共鳴構造で記述可能:

  I: SbIVRhII錯体(共有結合)

  II: RhI錯体(Z型SbV配位子で安定化)


2: Rh-Cl結合の特徴

Rh-Cl1結合もCl原子側に大きく分極

NBO解析により、lp(Cltrans) → σ*(Rh-Sb)とlp(Cltrans) → s(Rh)の相互作用を確認

第3の共鳴構造III: Rh-Cl結合の強い分極を説明


3: 錯体の電子構造

3つの共鳴構造を統一的に説明する描像:

  - d8平面四角形RhI錯体

  - 充填されたdz2軌道からSbVZ型配位子への電子供与

Z型配位子のtrans位をより Lewis酸性に


4: 研究の意義

新規アンチモン中心三脚型配位子の合成に成功

Rh-Sb相互作用の極性を実験的・理論的に解明


結論

キノリルドナーリガンドを持つアンチモン中心三脚型配位子を合成

RhCl3との錯形成でSb中心がRh-Cl結合に酸化的挿入

極性Rh-Sb相互作用を持つ新規錯体を得た

RhI中心がSbのZ型配位子への供与で安定化されていると解釈可能


将来の展望

触媒応用に向けた研究

さらなる錯体の多様性や反応性の探索

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