論文のタイトル: Practical Site-Selective Oxidation of Glycosides with Palladium(II) Acetate/Neocuproine
著者: Niels R. M. Reintjens , Imke M. A. Bartels , Nittert Marinus , Sarina C. Massmann , Daan V. Bunt , Marthe T. C. Walvoort , Martin D. Witte∗ , Adriaan J. Minnaard∗
出版: Synlett
巻: 35, 1291–1295
出版年: 2024
背景
1: カルボニル基の重要性
カルボニル基は有機合成化学の中心的役割を果たす
炭水化物の修飾にはヒドロキシ基の酸化が重要
位置選択的な酸化は保護基戦略や非保護炭水化物の修飾に有用
一級ヒドロキシ基の酸化は比較的確立されている
2: 二級ヒドロキシ基の選択的酸化の課題
非保護炭水化物の二級ヒドロキシ基の位置選択的酸化は困難
過去10年間で進展があったが、まだ課題が残る
Waymouthらの[(neocuproine)PdOAc]2(OTf)2触媒が注目される
この触媒は様々な基質に適用可能だが、普及が遅い
3: 簡便な酸化プロトコルの開発
商業的に入手可能なPd(OAc)2とneocuproineを用いた触媒系の開発
メタノール中での触媒のin situ調製
スクリーニング用の汎用性の高いプロトコルの確立
カラムクロマトグラフィーを避けた簡便な精製方法の開発
方法
1: 触媒系の最適化と基質適用範囲の調査
Pd(OAc)2とneocuproineを用いたin situ触媒系の開発
メタノール中での反応条件の最適化
様々な糖質基質に対する酸化反応の適用
簡便な精製方法の確立
2: 反応パラメーターの調整
溶媒:メタノールを選択(0.2 M濃度)
温度:50°Cで反応を実施
触媒量:Pd(OAc)2(5 mol%)、neocuproine (5 mol%)
酸化剤:ベンゾキノン (1.05当量)
反応時間:一晩(約18時間)
3: 簡便な精製プロトコル
反応混合物を濃縮後、水を添加
ジエチルエーテルで洗浄し、副生成物を除去
水層をシリンジフィルター(0.45μmと0.1μm)で濾過
凍結乾燥により最終製品を得る
純度90%以上の製品を得ることが可能
結果
1: 様々なグルコシドの酸化結果
メチル-α-グルコピラノシド:定量的収率(10グラムスケール)
チオグルコピラノシド:77%収率
保護グルコピラノシド:54-85%収率
キシロピラノシド:85%収率
グルクロノピラノシド:74%収率
2: 複雑な糖類の酸化
メチル-α-セロビオシド:62%収率
tert-ブチルベンジル-α-マルトシド:27%収率(副生成物の生成)
ダパグリフロジン:62%収率
3: 他の糖類の酸化挙動
メチルL-ラムノピラノシド:複雑な混合物を生成
メチルD-マンノピラノシド:複雑な混合物を生成
メチルD-ガラクトピラノシド:複雑な混合物を生成
プエラリン:C(3)からC(2)への転位生成物を形成(48%収率)
考察
1: in situ触媒系の有効性
Pd(OAc)2とneocuproineのin situ触媒系が機能することを実証
メタノール中での反応が高い収率を示す
グルコシドに対して特に効果的
簡便な精製法により、高純度の製品を得ることが可能
2: 基質の範囲と限界
グルコシド:高収率で目的の3-ケト糖を生成
二糖類:セロビオースは良好な収率、マルトースは課題あり
非グルコシド:過酸化や転位反応が課題
C-グリコシド:転位生成物の形成に注意が必要
3: Waymouthの触媒との比較
[(neocuproine)PdOAc]2(OTf)2触媒に比べ、活性はやや低い
しかし、商業的に入手可能な試薬で調製可能
スクリーニング用途に適している
一部の基質では同等以上の収率を達成
4: 方法の制限と課題
非グルコシドでの選択性の低さ
一部の基質での過酸化や転位反応
複雑な二糖類での収率の低下
高温(50°C)での反応が必要
結論
簡便な位置選択的糖質酸化法の確立
in situ調製可能なPd触媒系を用いた糖質の位置選択的酸化法を開発
グルコシドに対して高い効率と選択性を示す
簡便な精製法により、実用的なプロトコルを確立
非保護炭水化物の修飾における新たなツールを提供
将来の展望
非グルコシドへの適用拡大と選択性の向上
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