2024年9月12日木曜日

Catch Key Points of a Paper ~0125~

論文のタイトル: A Scalable, One-Pot Synthesis of 1,2,3,4,5-Pentacarbomethoxy-cyclopentadiene

著者: M. Alex Radtke, Caroline C. Dudley, Jacob M. O'Leary, Tristan H. Lambert

出版: Synthesis

巻: 51, 1135–1138

出版年: 2019


背景

1: PCCPの重要性

1,2,3,4,5-ペンタカルボメトキシシクロペンタジエン(PCCP)は強い有機酸

有用な有機触媒の前駆体として機能

キラルブレンステッド酸やシリコンベースのルイス酸触媒に応用可能

1942年にOtto Dielsにより初めて報告された


2: 従来のPCCP合成法の問題点

2段階の合成過程が必要

中間体の精製が困難で副生成物が多い

高温での反応が必要

合成に3日間を要する労働集約的なプロセス


3: 研究の目的

PCCPの合成プロセスを改善する

ワンポット合成法の開発を目指す

室温での反応を実現する

中間体の単離を不要にする


方法

1: 新規合成法の開発アプローチ

ジメチルマロン酸エステルとジメチルアセチレンジカルボキシレートを原料として使用

溶媒条件の最適化を検討

有機塩基や水性塩基溶液の使用を評価

相間移動触媒の導入を検討


2: 反応条件の最適化

ピリジンと酢酸の触媒システムを維持

ジエチルエーテルの代わりにジクロロメタンを溶媒として使用

室温での反応を実現

大規模合成(約50g)でも安全に実施可能


3: ワンポット合成の確立

オクタカルボメトキシシクロヘプタジエン中間体の単離を回避

飽和K2CO3水溶液を用いた二相系反応を採用

ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドを相間移動触媒として使用

16時間の反応時間で目的物を得る


結果

1: 新規合成法の成果

PCCPを48%の収率で合成(38.3gスケール)

従来法と比較して13%の収率向上を達成

反応時間を3日間から24時間に短縮

室温での反応を実現し、安全性を向上


2: 反応の均一性向上

従来法で生じていた取り扱いにくい不溶性物質の形成を回避

均一な反応溶液を得ることに成功

精製プロセスが簡略化され、取り扱いが容易に


3: 構造確認

1H NMR、13C NMR、HRMSによる生成物の構造確認

特徴的なNMRシグナル:δ = 20.11 (s, 1 H)、4.06 (s, 6 H)、3.92 (s, 6 H)、3.79 (s, 3 H)

HRMS: m/z [M – H]- calcd for C15H15O10: 355.0671; found: 355.06125


考察

1: 新規合成法の利点

ワンポット合成による操作の簡略化

室温での反応による安全性と省エネルギー性の向上

中間体単離の回避による時間と労力の節約

スケールアップが容易で、大量合成に適した手法


2: 従来法との比較

収率の向上:48%(新法)vs 35%(従来法)

反応時間の短縮:24時間(新法)vs 3日間(従来法)

精製プロセスの簡略化:均一溶液からの単離が可能に

安全性の向上:室温反応による発熱リスクの低減


3: PCCPの応用可能性

有機ブレンステッド酸触媒への応用

シリコンベースのルイス酸触媒としての利用

キラル触媒の開発における重要な前駆体

金属-PCCP錯体を用いた新規触媒系の探索


4: 研究の限界点

収率48%でまだ改善の余地がある

長時間(16時間)の反応時間が必要

相間移動触媒の使用による追加のコスト

水性塩基の使用による廃液処理の問題


結論

PCCPの効率的なワンポット合成法を開発

収率、反応時間、安全性の大幅な改善を実現

有機触媒開発における重要な前駆体の入手が容易に


将来の展望

さらなる条件最適化や新規応用の探索が期待される

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