論文のタイトル: Total Synthesis of Ganoapplanin Enabled by a Radical Addition/Aldol Reaction Cascade
著者: Nicolas Müller, Ondřej Kováč, Alexander Rode, Daniel Atzl, and Thomas Magauer
出版: Journal of the American Chemical Society
巻: 146, 33, 22937–22942
出版年: 2024
背景
1: ガノデルマメロテルペノイドの概要
ガノデルマ属の菌類から単離された構造的に多様な天然物
100以上の化合物が知られている
共通の構造:ハイドロキノン部位とテルペノイド骨格の結合
3つのサブクラス:直鎖型、多環式、二量体型
2: ガノアプラニンの特徴
2016年にQiuによってGanoderma applanatumから単離
5つの連続する立体中心(うち2つが第四級)を持つ
前例のないスピロビスアセタール骨格を有する
T型電位依存性カルシウムチャネルの阻害活性を示す
3: 研究の目的
ガノアプラニンの初の全合成を達成する
複雑な構造を構築するための新しい合成戦略を開発する
生合成経路に着想を得た収束的な合成アプローチを実現する
方法
1: 合成戦略の概要
芳香族ポリケチド骨格と二環式テルペノイド断片の収束的カップリング
チタン(IV)媒介ヨードラクトン化による立体選択的合成
ラジカル付加/アルドール反応カスケードによる断片の融合
後期段階での酸化による官能基化
2: テルペノイド断片の合成
アルデヒド17とビニルヨージド18のNozaki-Hiyama-Kishi反応
Ti(Ot-Bu)4、CuO、ヨウ素を用いた立体選択的ヨードラクトン化
Krapcho条件下でのメチルエステルの除去
アリル化とオゾン分解によるアルデヒド15の合成
3: 芳香族断片の合成
フェノール22からの保護と還元によるベンジルアルコール23の合成
メシル化/臭素化によるベンジル臭化物24の合成
1,4-ヒドロキノンとのエーテル化によるベンジルエーテル25の合成
PIDA酸化によるキノンモノアセタール14の合成
4: 断片のカップリングと後期段階の変換
トリエチルボラン/酸素系を用いたラジカル開始
トリブチルスズヒドリドによる分子内ラジカル1,4-付加
分子間アルドール反応による断片の融合
後期段階での酸化によるスピロビスアセタールとラクトンの構築
結果
1: テルペノイド断片の合成結果
ヨードラクトン化による単一ジアステレオマーの形成(61%収率)
アルデヒド15の効率的な合成を達成
2: 芳香族断片の合成と断片カップリング
キノンモノアセタール14の高収率合成(82%)
ラジカル1,4-付加/アルドール反応カスケードによる脱芳香族化アセタール13の形成(81%収率)
3: ガノアプラニンの完成
選択的C4a酸化によるキノン29の形成
スピロビスアセタール11の立体選択的構築
銅(I)媒介酸化によるラクトン31の形成(47%収率)
最終的な脱アセチル化によるガノアプラニン(7)の合成
考察
1: 合成戦略の有効性
収束的アプローチによる効率的な全合成の実現
立体選択的ヨードラクトン化の成功
ラジカル/アルドール反応カスケードの新規性と有用性
2: 後期段階酸化の重要性
C4a位の選択的酸化によるスピロビスアセタール形成
ラクトン構築のタイミングが重要(早期導入は不適)
3: 保護基戦略の重要性
フェノールのアセチル保護が後期段階の変換に必須
ベンジル保護基の使用は最終段階の脱保護を困難にする
4: 研究の限界点
ラセミ体の合成(光学活性体の合成は未達成)
一部の変換における収率の改善余地
結論
ガノアプラニンの初の全合成を達成
新規ラジカル付加/アルドール反応カスケードの開発
後期段階酸化戦略の有効性を実証
本合成戦略は構造的に類似した天然物合成にも応用可能
将来の展望
光学活性体の合成
生物活性評価
類縁体合成
0 件のコメント:
コメントを投稿