論文のタイトル: Photodriven Sm(III)-to-Sm(II) Reduction for Catalytic Applications(光駆動Sm(III)からSm(II)への還元と触媒応用)
著者: Christian M. Johansen, Emily A. Boyd, Drew E. Tarnopol, Jonas C. Peters
雑誌: Journal of the American Chemical Society
巻: 146, 37, 25456–25461
出版年: 2024
背景
1: SmI2の特性と課題
SmI2は多用途な一電子還元剤
大きく柔軟な配位圏が選択性を可能に
通常化学量論量で使用される
Sm(III)-アルコキシド種の形成で反応が停止
触媒的再生が困難
2: 既存の再生方法と問題点
従来法:ハロシラン、低原子価金属、電気化学的手法
問題点:過酷な条件、副生成物の生成
光駆動戦略が未開拓
内圏還元剤としてのSmI2(L)nの化学との互換性が課題
3: 研究目的
光化学的手法によるSmI2再生法の開発
SmI3およびSm(III)-アルコキシドからのSmI2生成
添加物存在下でのSm(II)種生成の実現
光駆動Sm触媒反応への応用
方法
1: 光還元アプローチ
ハンチュ(Hantzsch)エステル(HEH2)を光還元剤として使用
[Ir(dtbbpy)(ppy)2]+ を光触媒として使用
UV-vis分光法によるSmI2生成のモニタリング
サイクリックボルタンメトリーによる電気化学的特性評価
2: SmI3からのSmI2生成
SmI3、HEH2、2,6-ルチジン塩基の混合物を調製
440 nmの光照射
UV-visスペクトルによるSmI2特性ピークの観察
塩基の有無による影響の比較
3: Sm(OiPr)3からのSmI2生成
Sm(OiPr)3、テトラ-n-ヘプチルアンモニウムヨウ化物、HEH2の混合
酸(HTFSI)の添加
440 nmの光照射
UV-visおよびCVによる生成物の分析
結果
1: SmI3からのSmI2生成結果
HEH2とルチジン存在下で、SmI2特性ピーク(555 nm, 618 nm)を観察
最大収率約25%
塩基なしでは反応進行せず
[Ir3+]触媒使用で80%変換(2分)を達成
2: Sm(OiPr)3からのSmI2生成結果
酸添加により光照射下でSmI2生成を確認
CV研究により、酸添加でのSm種の還元電位変化を観察
[Ir3+]触媒使用で30%変換(2分)を達成
3: 添加物存在下でのSm(II)生成結果
プロトン性、キラル、ルイス塩基性添加物存在下でSm(II)生成可能
より還元力の強い光触媒 2,4,6-tris(diphenylamino)-3,5-difluorobenzonitrile (3DPA2FBN)使用でSmBr2、Sm(HMPA)42+生成
考察
1: 光還元メカニズム
HEH2の光励起による直接還元
[Ir3+]触媒を用いた還元的消光
プロトン移動を伴う電子移動(PCET)の可能性
添加物の役割:配位子効果、プロトン源
2: 従来法との比較
ルイス酸性金属添加物や副生成物なしで進行
多様な配位子との互換性
光駆動による穏和な条件下での反応
3: 応用可能性
ケトン-アクリレートカップリング反応への適用
光駆動Sm触媒反応の実現
異なる基質ペアでの反応性の違い
4: 研究の限界点
光還元の量子収率や効率に関する詳細な検討が必要
基質適用範囲の更なる拡大が課題
反応メカニズムの詳細な解明が今後の課題
結論
光駆動によるSm(III)からSm(II)への還元を実現
添加物存在下でのSm(II)種生成を可能に
光駆動Sm触媒反応の実証
将来の展望
Sm触媒の新たな応用可能性を開拓